建設人材の確保・育成


職業訓練法人近畿建設技能研修協会により管理・運営されている三田建設技能研修センターでは、昭和57年の設置・開設以来、建設人材の確保・育成のため、各種講習を実施してきています。この人材の確保では、喫緊の課題として昨今、声高に言われていますが、単に新規確保だけではなく、確保し続けるといった視点も重要と考えられます。また建設技術者・技能者の入職後の技能向上・資格取得に当協会・センターとしても各種技能講習、専門研修及び資格取得対策講習等を行い、建設人材の育成にも寄与していきたいと考えています。今年度の事業推進に当たっては以下のような方針のもと、建設人材の確保・育成に引き続き取り組んでいきます。

 令和4年度 事業推進基本方針

1 建設労働者育成支援事業の講習受託

 平成27年度からの5年間のタスクフォース事業である厚生労働省施策の「建設労働者緊急育成支援事業」については、建設産業への入職に繋げるため、包括受託者である建設業振興基金の地方拠点である、兵庫県建設業協会、建設産業専門団体近畿地区連合会、豊岡建設技術者養成センター及び当協会からの受託事業として、無職・無業者等を当センターに受け入れて、令和元年度までの5年間で33回、修了者数260名余りの実績を上げてきた。当協会が自ら地方拠点となった平成29年度からは、講習実施機関としての特性を生かして他の地方拠点では行わない「初めての建築設備コース」や受講生を女性に限定して女性が参加しやすい「女性限定重機オペレーターコース」などの講習を行うなど、「建設労働者緊急育成支援事業」の地方拠点としても当該事業に取り組んできた。令和2年度からは当該事業の後継事業として「建設労働者育成支援事業」が実施され、令和4年度も当該事業の最終年度として地方拠点としての兵庫県建設業協会が事業を行うこととされ、講習受託者の立場で建設業への入職促進に繋がる講習内容を設定して講習実施するなどの取り組みを引き続き展開する。

2 建設業入職者長期研修の実施

 上記1の新規入職者確保のための事業展開と併せて、従来からの建設産業界の大きな課題の一つである「離職防止・定着促進」のための事業にも一層の取組を進める。令和元年度から新たな事業展開の一つとしてスタートした「建設業入職者長期研修」は、在学時に建設系の学習機会のない、普通科高校や文系学部修了者の新入社員を主な対象として、通年で24回の研修を設定したもので、この研修により、例えば建設系の素養がない入職者でも基礎的なことが学べるような研修とし、離職防止・定着促進や入職者の親・学校関係者等に対する安心材料となるよう設定したもので、令和4年度も5月から9月にかけて24日間の土木、建築の両コースを実施する。なお令和5年度からの実施に際しては令和4年度までの過去4回の講習参加企業等へのアンケートやヒアリングを行い、5月から約半年の週1回の開催方法が望ましいのか入社直後の4、5月に集中的に行う方が望ましいのか、検討することとしたい。

 

3 リカレント(学び直し)講習の実施

 上記2と併せて入職後、3~5年目の社員の離職防止・定着促進の一環として、リカレント研修(所謂学び直し)を新たに令和元年度に開始した。研修内容は、工程管理、原価管理、施工管理等の実務面の研修や、将来の幹部候補生としての人材力強化等の組織マネジメント等とし、副次的な効果としての会社間の社員同士の繋がりの醸成も期待できるものとして、令和元年度は10月から12月まで8回の研修を設定した。令和2年度は6月から7月に6回の実施を予定したがコロナ禍の影響もあり、やむなく中止したが、令和3年度は10月に概ね同様の内容で実施した。令和4年度においても10月に6日間の講習を行うこととしている。このリカレント講習については、3~5年目に限らず、一定の在職年次に相応したステップアップのための定期的な講習も検討して技能・技術の向上に繋げることとしたい。この取組においては、入社後、これだけの期間に、在職年次に相応した定期的な講習により、例えば入職後10年ではこのような技能・技術、並びに資格が取得できるという、キャリアパスが示せれば、入社希望者並びに入社希望者に当該企業を推薦する立場の高校等にとっても安心材料となると考えられる。

 

4 教員免許更新制に対応した選択領域の講習の実施

  平成30年度の新規事業として、教員免許更新制度に対応して工業高校教員や中学校教員等向けの選択領域の講習を県内外の高校教員の参加を得て建設業振興基金と連携して行った。平成21年度に教員免許更新制が導入され、10年の有効期間満了までに30時間以上の免許更新講習を受講・修了することが教員に求められている。この講習は、必修領域(6時間以上:全ての受講者が受講する領域)、選択必修領域(6時間以上:受講者が所有する免許状の種類、勤務する学校の種類又は教育職員としての経験に応じ、選択して受講する領域)、選択領域(18時間以上:受講者が任意に選択して受講する領域)により構成されるが、平成28年度までは工業高校等の建設系の教員が受けるに相応しい選択領域の講習がなく、平成29年度に富士教育訓練センターで初めて実施され、平成30年度から令和3年度まで当センターでも行ってきた。令和4年度においても選択領域での建設業における施工実務を体験できる研修を概ね令和3年度までの講習内容で行うこととしているが、当該免許更新制度そのものの見直しが既に文部科学省から方針決定されており、今後の動向を注視しながら対応していく。

 

5 社会人基礎研修の実施

  社会人基礎研修については、当協会の講習を内定者及び入職直後者にまで拡充し総合的な講習体系構築のため平成27年度末に兵庫県建設業協会の会員を前提に試行的に実施し、その成果も踏まえて平成28年度以降、毎年実施しているが、当該事業についても、入職後の離職防止・定着促進に寄与するものであると考えられることから4月1日の入職日を挟んで計10回行う。受講者は、西日本建設業保証株式会社の業務エリアの各県建設業協会会員企業の新規入職者で、当該事業により、社会人としての基礎的素養を身につけるとともに同業種で働くこととなる若者が知己を得てSNS等のツールを通じて情報交換し、入職後の定着に繋がることを期待するものである。

 

 

6 オーダーメイド研修の拡充

  オーダーメイド的研修として、特定企業からの要請に応じる形で、当該企業が当該企業及び傘下企業等を集約しての講習委託にも応じることとする。この際には、時期、内容等について事前協議を十分に行い、当該企業の意向を踏まえたものとして講習の充実を図り、継続開催に繋げる。

 

7 ケーブルクレーンの操作者講習

 砂防工事や治山工事においては資材等の搬入にケーブルクレーンの設置、操作が不可欠であるが、国土交通省近畿地方整備局六甲砂防事務所や兵庫県県土整備部砂防課、農政環境部治山課等の発注工事においては受注者によるケーブルクレーン操作者の確保が容易ではない。このためこれらからの要請を踏まえ、ケーブルクレーン操作者の特別教育修了者を対象として操作技能の習熟のための講習を関係機関と連携して令和2年10月に六甲砂防事務所の発注工事現場で初めて行った。令和3年度も関係機関等と協議して令和3年12月に六甲砂防事務所の工事現場で行った。令和4年度も過去2回の参加者のアンケート結果等を踏まえ、実施に向けて内容等を関係機関と協議していく。

 

8 オンラインセミナー(ウェビナー)の実施に向けての取組

 新型コロナ感染症拡大防止の一環として、令和2年9月4日にZOOMを使用したオンラインセミナーを44人の参加を得て実施した。当協会会員企業の人事担当、総務担当、管理者向けの建設業におけるWebツール活用のセミナーで東京のスタジオに当協会の職員及び講師が出向き発信をした。令和3年度はこの講習手法に馴染むものの選択や実際のやり方等について検討を行ってきており、令和4年度においても社会人基礎研修等での活用に向けての取組を行う。

 

9 行政職員への講習実施

 当協会・センターでは民間事業所で勤務する者への技能講習、資格取得支援に取り組んできたが平成28年3月に、兵庫県及び県下市町の土木職職員を対象とした、1級土木施工管理技士試験対策講習を初めて実施した。また平成31年1月に兵庫県の新規採用土木職員を対象とした、受注者からの視点で施工計画・管理を学ぶことにより、発注者としての工事管理業務や発注計画の策定に寄与する講習を行い、令和元年9月30日から10月1日には兵庫県県土整備部工事管理研修として総合土木職の入庁1年目及び3年目の職員を対象として施工計画書のチェックポイント、仮設計画、重機計画等の講習や型枠、鉄筋組立の実技講習を行った。令和2年度も12月に2日間、総合土木職入庁1年次の職員を対象に令和元年度の講習内容に生コン工場での実習も加え講習内容を拡充して実施した。令和3年度も12月に県の要請に応じて同様の講習を行ったところであり、令和4年度においても兵庫県からの要請があれば実施に取り組んでいく。その際には、従来の講習内容に加え、工事の受注者の視点から、工事を施工するために必要な関係機関との協議を終えておくことや、支障なく工事施工が出来るよう設計を行うことは発注者の責務であり、それらが十分になされないままに発注されると工事が一時中断され、その結果工期が延びて受注者の経費も増え、併せて技術者の効率的稼働の妨げにもなり、企業経営にも影響が出かねないこととなる。このような視点についても県の行政職員に認識してもらえるよう講習内容に組み入れて行くこととし、県側と協議する。

 

 10 建設産業担い手確保・育成コンソーシアムの後継会議や各種会議に参画

 (一般財団法人)建設業振興基金が建設産業担い手確保・育成のため、平成26年10月29日に設置した、「建設産業担い手確保・育成コンソーシアム」は一昨年10月で5年の設置期間が終了したが、このコンソーシアムの取組の一つである「建設関連職業訓練校会議」については、関係訓練校と連携してそれまでの取組を生かしてより一層の充実に主導的立場で臨んでいく。また兵庫県建設業魅力アップ協議会や兵庫県建設産業団体連合会への参画や兵庫県建設産業人材確保推進連絡協議会においては従来からの参画に加え、令和3年度から設置される作業部会にも人材の送り手側である工業高校と人材の受け手側である兵庫県建設業協会会員企業の双方の協議の場に加わることにより当センターの講習内容の一層の充実が図られることから当該作業部会に加わってきたが、令和4年度においても様々な会議等の場において意見を述べていく。

 

11 高校への出前講座実施及び就業体験継続

 「兵庫県建設業育成魅力アップ協議会」のアクションプログラムとして、平成26年度から実施している県内の工業高校等への出前講座については、平成26,27年度の兵庫工業高校、平成28年度の龍野北高校については、出前による講習を行ったが、平成29年度の篠山産業高校、平成30年度から令和2年度までの3か年は豊岡総合高校に当センターに来てもらっての講習を行った。また令和3年度は豊岡総合高校に加え初めて尼崎工業高校にも当センターへの来所による講習を行った。来所による講習の方が講習種目等が多くなる一方、行き帰りの時間の制約から講習時間が短くなるという相反する状態があるが、令和4年度もより効果的・効率的な講習となるよう検討して行い、より多くの工業高校生の建設産業への入職促進に繋げる。また従来から実施している兵庫県建設業協会や大阪建設業協会、奈良県建設業協会から受託している工業高校生の就業体験も継続して行う。併せて平成29年度から土木・建築の2級施工管理技術検定の学科試験については年2回の実施及び17歳からの受験が可能となり、工業高校生等の受験機会の拡大が図られたことから、平成29年度から広島県と広島県建設工業協会からの依頼で令和元年度まで広島県立広島工業高校や同県立庄原実業高校へ当該試験日の直前に当協会講師を派遣して試験直前対策講習を行っており、令和2年度、3年度はコロナ禍で中止となったがこの講習についても入職促進にも繋がることから、令和4年度においても依頼があれば積極的に対応していく。

 

12 建設分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入への対応

 デジタル技術の進展に伴い、建設分野においても情報の有効活用、設計の最適化、施工の効率化・高度化、維持管理の効率化・高度化を目的として、ICT施工やBIM/CIM等の導入が図られてきている。令和元年9月には兵庫県企業庁のひょうご小野産業団地において、約50名の参加により、ICT土工現場見学会・講習会を開催したところである。その後も、「リカレント講習」や「建設のCPDSセミナー」において、BIM/CIMモデルの作成と活用、ICT工事の設計データ作成と活用等を講習内容の一部として行ってきている。これらの講習も継続しながら、ICT工事等のデジタル技術の進展に相応した専門研修の導入に取り組んでいく。

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